合同事務所の必要性と役割について

 私は、平成15年に行政書士に登録して18年目に入りました。多くのお客様や先輩方に助けていただきながら、知識や実務経験を得てきました。その経験を踏まえ、現在の合同事務所としての形を作りました。合同事務所の必要性と役割について、私の考えをお伝えしたいと思います。

(1)なぜ合同事務所の形態を選択したのか

 行政書士は、国家試験に合格した者、一定の資格(弁護士、弁理士、公認会計士、税理士)を有する者、若しくは公務員として一定期間行政事務を担当した経験がある者、いずれかの要件を満たす者が各都道府県の行政書士会に登録することで事務所を開設し、業務を行なうことが出来ます。現在、全国に約48000人、福岡県で約1600人が登録しておりますが、その多くは国家試験に合格した者がひとりで開業しています。

 国家試験に合格した者は、試験によって一定の知識は有していますが、実務経験が全くない状態で独立開業することになります。専門家として、その実務経験の不足は、実務経験を得た者よりお客様に不利益を与える可能性が高くなると考えられます。当然それは行政書士本人にも大きなリスクとなります。

 少しでも不利益を回避する方法は、一つ一つの業務を丁寧に確実に遂行することですが、これも経験者等のアドバイスがあれば更に不利益が回避できる可能性が高くなります。実務経験を積むことも、開業間もない行政書士にはなかなか機会に恵まれないことではないかと思います。行政書士会では研修を実施してはいますが、「百聞は一見に如かず」で実際の経験に勝るものはないと思います。

 このような状況の中、福岡南行政書士合同事務所は、合同事務所という形を取ることで、新たに登録する方に報酬を得ながら実務経験を積んでいただける体制を作りたいと考えています。事務所内で、教える者と学ぶ者それぞれが成長出来る体制を作ることで、事務所全体のスキルアップを図り、それがお客様の利益に繋がると考えております。

(2)合同事務所でやりたいこと

 お客様に優良なサービスを安定して提供するために、業務に精通した行政書士を育成する体制を作り、常に事務所全体のスキルアップと情報収集、情報提供が出来る組織を作りたいと思っています。これが継続出来ることで、お客様、事務所、事務所に関わる人員、すべてがWIN-WINの関係が築けると考えています。

 多くの専門職が、法律や業界内の規定で新規登録者が実務経験を積める制度を構築しています。しかしながら、行政書士会でその体制が整うのはまだまだ時間が必要かと思っています。合同事務所の形態にすることにより、事務所内で業務に精通した行政書士の育成体制を作り、しっかりとした運営を可能とすることで、お客様に優良なサービスを提供し、行政書士やその他職員が安心して働ける組織を作りたいと思っています。

(3)合同事務所にすることのお客様のメリット

 迅速な対応と正確な情報でお客様のメリットに直結します。
合同事務所で人員数を確保することにより、急なご依頼やご相談への対応が可能になります。また、法令改正等の新たな動き・手続き等が発生した際に、情報収集や事前準備をすることが可能になり、正確な情報と手続きをご提供することできます。

(4)合同事務所の行政書士のメリット

 専門職として必要な知識や実務経験を得られます。
合同事務所に新たに登録する方は、既存の行政書士や職員等と同じフロアで業務を行なうことになります。その中で、自ら受任した業務を行なう際に周りからのアドバイスを貰うことが可能になります。また、自ら業務を受任するのが困難な場合でも、事務所で受任した業務の手伝いや、共同で受任する形を取ることで、常に学ぶための時間を作れる体制が取れます。

 行政書士として知識を深めていくために、自ら法令を学ぶのは大前提として、まずは法令に基づく書類作成の作業から学んでいくことになります。福岡南行政書士合同事務所では多くのお客様のご依頼に対応していますので、書類作成について多くの情報をインプットでき、実際の知識にするためのアウトプットをする機会が多数得られます。

 経験を得るための最大の問題となる期間的なことで考えると、例えば、主力業務のひとつの建設業許可関連の書類作成は2年に1度の手続きがあるため、一通り書類作成を経験するだけでおおよそ2年掛かります。その周辺の関連の手続きや、建設業許可関連以外の主力業務である外国人の在留関係手続き、医療関連の手続き、福祉関係の手続きなど、並行して学んでいくとして最低3年は必要となるでしょう。書類作成だけでなく、許可に関連するコンサルタントや経営に関連するコンサルタントなどを考えると更に多くの経験が必要になると思います。多くの案件を処理出来る体制があり、それをアドバイス出来る人員が整っている状態だからこそ、短い期間で実務経験を得ることが可能となります。

(5)最後に

 行政書士試験に合格された方には、初めから独立開業を考えて行政書士に登録される方もたくさんおられます。その方々の考えを否定するわけではなく、合同事務所の形態は、今の私が考える行政書士事務所内での育成制度のひとつの形だと考えています。

 私自身は、登録前にしっかりとした研修制度がないという問題に対する挑戦だと考えて、育成制度の確立に取り組んでいます。

令和3年1月1日 

行政書士 田村公隆